ふだん何気なく使っているダンボール箱。使用したあとは簡単に畳めて収納できるので、うちにも三枚ほどストックがあります!皆さんのご家庭にも、商品の空箱などのダンボールがあるのではないでしょうか?
モノを送るときに使うのはもちろんのこと、子供の工作や、緊急時には足元に敷いて保温もしてくれるダンボール。軽くて丈夫で冷たいものは冷たいままに、温かいものは温かいまま保存してくれる……。よく考えると、ダンボールってすごいヤツだと思いませんか?
今回は、身近にあるすごいヤツ、ダンボールの素材を調べてみました。知ればきっと、誰かに話したくなると思いますよ!
ダンボールって誰が作ったの?
ダンボールとは狭義ではダンボールシートのことを指す
ダンボールシートの出来上がり方
ダンボールにはこんな特殊加工があるものも!
ダンボールがこんなにも愛されている理由
まとめ
○ダンボールって誰が作ったの?
日本で初めてダンボールを作った方は、井上貞治郎さんという人です。綿織り機からヒントを得て、「厚紙を貼り合わせたら丈夫なシートができるんじゃないかな?」と思ったのだそう。こうして1909年に出来上がったのが、現在のダンボールの原型です。
このとき使われた『厚紙』のルーツをたどると、なんと1859年、今より100年以上前にさかのぼります。
イギリスの紳士が、「貴族が着ている服のえり元みたいに厚紙を波状に折ったら、丈夫な紙ができるんじゃないかな?」と思いついたのです。
こうして生まれた厚紙は、シルクハットの内側に使われました。その厚紙は通気性がよく、クッション性もあったので、シルクハットの中に使うだけじゃもったいないと人々は思いました。当時、アメリカでは壊れやすい電球をどう包むのかが問題になっていましたが、この電球用の包み紙にナミナミの厚紙が採用されることに。こうしてナミナミの厚紙は『包む』目的として使われるになり、さらに改良を重ねられ、1909年に日本に渡ってきたのです。
井上貞治郎さんは、ダンボールの名付け親なのですが、「段+ボール(紙)」でダンボール、と名付けたそうですよ。それまで日本ではしわしわ紙(ナミナミだからかな?)と呼ばれていたので、井上さんが命名しなかったら、今頃ダンボール箱は「しわしわ箱」と呼ばれていたかもしれません!
○ダンボールとは狭義ではダンボールシートのことを指す
みなさんは「ダンボール」というとなにを思い浮かべますか?
みかん箱のような形の茶色い箱ではないでしょうか。
あれは正確には『ダンボールシートを素材とする箱』。ダンボールというのは狭義ではダンボールシートのことを指します。ダンボール箱を作っている会社は製紙会社から『ダンボールシート』を購入してさまざまな形に切って成形しています。
さまざまな形に変わるダンボール製品の素材となる『ダンボールシート』とは、ライナーと呼ばれるボール紙(表ライナーと裏ライナーの2つ)とナミナミの形をしている「中しん」を糊で貼り合わせた三層構造になっています。この三つが合わさったものをフルート(段)と呼びます。
ダンボールの強度は材質のほか、フルートの厚みや種類によって変わります。
たとえば、シングルフルートのよりも、ダブルフルート(ナミナミを挟んでいるシートを2段にしたもの)のほうがぐっと強度は高まります!
○ダンボールシートの出来上がり方
ダンボールを通販で購入したとき、「あれ!思っていたのと違う!」と思ったことはありませんか?それは『こういうのがダンボールだろう』と思っている厚みよりもぺらぺらだった場合ではないでしょうか。
皆さんが「これがダンボール」と思っているものは正確にはAフルートと呼ばれる厚さのものです。
先ほど、ダンボールは3層構造だと紹介しましたよね。
その3層を作るために、製紙工場では100mもの長さがあるコルゲータという貼合機(てんごうき)で接着していくのですが、このとき使われる表ライナーと裏ライナーの種類、そしてナミナミの形をした中しんの高さによって強度や質感がまったく変わってくるのです。
★知っておこう!『ダンボールのライナー』
ライナーの紙質にはD、C、Kの種類があります。これは古紙の含有率の差です。例えばKライナーは別名クラフトライナーとも呼ばれ、バージンパルプ100%で作られています(現在は製紙の抄造技術が進歩したので、古紙を含んでいます)。
逆にDライナーは古紙含有率100%。ざらついているので印刷には不向きですが、古紙を使っているので安いのが魅力です。
Kライナー……クラフトライナー (古紙含有率 50%以上)
Cライナー……ジュートライナー(古紙含有率 90%以上)
Dライナー……ジュートライナー(古紙含有率100%)
もうひとつ、ライナーの種類を決定するのは『厚さ』の違いです。厚さは重さ(斤量)で決定します(1平米あたりの重量=g/㎡)。
厚ければ厚いほど紙が硬くなり、重くなります。中に入れるものが洋服なのにダンボールが厚くて重すぎるのは、うーん……と思っちゃいますよね。逆にパソコンなどを入れるダンボールが薄くて柔らかすぎたら怖いです。このように、用途に合わせてさまざまな重さのダンボールシートが使い分けられています。
斤量は正式には 【g/㎡】 と表記しますが、単純に4、5、6、7と1桁の数字で表されることが多いです。
なぜ1から始まらないのかというと、日本でのダンボールの歴史が1909年と古いため。当時の尺貫法の匁で表されていたためなのだそうです。1951年に重さをキログラムで表すようになる前は、もんめ(=3.75g=5円玉の重さ)と表していました。
4匁(もんめ)=130g/㎡ 、5匁(もんめ)=170~180g/㎡ 、6匁(もんめ)=220g/㎡ 、7匁(もんめ)=280g/㎡
この重さの単位と、さきほど説明した紙質を合わせ、K180(Kライナーの180g/㎡)というように、ライナーを表示します。もんめの単位からK5と呼ばれたりもします。
D4<C5<C6<K5<K6<K7と6種類のライナーがありますが、一般的に使用されるのはC5・K5・K6の3種なのだそうです。
★知っておこう!『ダンボールの中しん』
中しんとはナミナミの形の部分のこと。この中しんに使用する板紙は、印刷をしないので、ライナーで使う紙よりも落ちた紙質を使うようです。
波状に加工するので、折り曲げやすく、接着性もよいものがグッド。というわけで、通常、斤量は115~125g/㎡のものを使います。120g/㎡、160g/㎡、180g/㎡、強化180g/㎡、強化200g/㎡と種類があります。
『強化』とついているものは斤量は同じでも、薬剤で硬くしてある商品のこと。
「だったら、全部強化してガチガチに硬くすればいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、中しんがライナーと比較して硬すぎると、ライナーの表面がでこぼこになってしまうので注意が必要なのです。また、中しんが硬すぎると折り曲げたときにライナーが割れてしまったり、うまく印刷できなくなってしまいます。
そのへんのちょうど良いパランスを模索して今のライナーと中しんの組み合わせになったのか~と思うと、そのへんに置いてあるダンボール箱が、すごいやつなんだな、と思えますね。
★知っておこう!『ダンボールのフルート』
フルートとは、中しんを波状に加工したもののこと。ナミナミの形が30㎝あたりにどのくらい入っているのかによって種類分けされています。
Aフルート……よく使われているのがこのAフルート。ダンボールの基準となっています。シートの厚さは5㎜。30cm内になみ模様が34±2個になるものとされています(前後2個までの誤差はOK)引っ越し用のダンボールのほか、野菜を入れるダンボールにも使います。
Bフルート……Aフルートより薄く、切れ込みや折り込みを入れることができます。小さくて重さがないものや内装箱を梱包するときに役立ちます。パソコンなどのデリケートな商品の緩衝材として使ったり、ディスプレイの商材にも使われたりしますよ!
厚みは2.5~2.8mm、30cmあたりのなみ模様の数が50±2個になるものとなっています。
Cフルート……日本ではAフルートが主流ですが、欧米をはじめ世界のほとんどの国ではこちらが主流となっています。Aフルートよりも20%ほど薄く、ナミナミが細かくなっています。薄い分省スペースで資源も節約できると人気なのだそうです。固くて丈夫なダンボールを求める日本と考え方が違って面白いですね。厚さは約3.5~3.8mm、30cm内になみ模様が40±2個になるものが当てはまります。
Wフルート……Wフルートとはダブルのフルートのこと。AフルートとBフルートを貼り合わせたものなので、丈夫で分厚く、重さもあります。重いものを梱包するのにつかわれるほか、海外に輸出するものを梱包するときにもよく使われるそうです。AフルートとBフルートを合わせて8mmになるものになります。
Eフルート……Eフルートはとっても薄く、厚さ1.10~1.15mm、30cm内になみ模様がおよそ95±5個と定められていますが、実際には80程度のものも存在するそうです。ギフト箱などの外装箱に使われることが多いのだそう。触った感じはただの厚紙のように見えますが、ちゃんと中しんがあります。
このようにして、ダンボールシートは種類分けされ、『表ライナー/中芯/裏ライナー フルート』であらわされます。例えば、『K180g/S120g/K180gAF』といった具合です。中しんが標準である120gで作られている場合は、この真ん中を省略して、『K5/K5 AF』と略します。さらに表と裏のライナーが同じ材質なら、こちらも省略してしまって『K5AF』で通じちゃいます!
女子高生の間ではやる言葉はなにかを省略した言葉が多いですが、なにかを省略して呼ぶのがうまいのは日本人の特質なのかもしれませんね!
○ダンボールにはこんな特殊加工があるものも!
濡れるとしなしなになっちゃうイメージのダンボールですが、中には水を弾く加工をされているものもあるんです。ダンボールには以下の特殊加工がほどこされているものもあります。
・撥水加工
撥水加工とは、ダンボールの表と裏の紙(ライナーといいます)に水を弾く加工を施すこと。表と裏の片側だけ撥水加工を行うことも可能です。
皆さんはカバンを買った時に防水スプレーをしますよね? あれをイメージしていただければと思います。一時的に雨に当たっても水滴を弾いてくれるのです。
また、冷蔵庫などの湿気のある環境で強度が落ちるのを防ぐ効果もあります(長時間、ずっと湿気にさらされるのはNG)。
野菜を運ぶ箱や、冷凍食品、生花などを運ぶ箱によく用いられます。
・耐水加工
耐水加工は撥水加工の上位バージョン。撥水加工よりも「水」が原因で強度が落ちるのを防いでくれます。表と裏の紙(ライナー)以外のナミナミ部分(中しん)や接着剤にも耐水の処理を施します。
農産物や新鮮な魚介類の冷凍・冷蔵発送のほか、輸送中に箱の水濡れが心配な商品に用いられます。
・防水加工
なんと防水加工を施したダンボール箱は、箱を組み立ててから中に水を注いでも外には漏れません!
その効果は発泡スチロール並み!新鮮な魚を郵送するのにぴったりです。
水産業者さんで使用されているそうですが、なんだか魔法のダンボールみたいですね!
○ダンボールがこんなにも愛されている理由
ダンボールの素材を学んでみて「けっこう単純な構造なんだな~」と思いましたか?
そう、簡単に言うと、ナミナミの紙を厚紙2枚で挟んでいる、というだけなのですが、ダンボールにはメリットがいっぱいあるのです。以下、ダンボールが愛されている理由をまとめてみます!
・ダンボールは虫が入りにくい
ダンボールは密閉性が高いので、虫が入りにくいという特徴があります。また、一度使用した後はリサイクルされるので清潔です。
・紙でできているからCO2がほとんどでない
ダンボールの材質は紙。使った後は『古紙』として回収してリサイクルできちゃいます。ダンボールの古紙回収率はなんと90%以上!
プラスチック系の包装容器をリサイクルする場合、その工程でCO2(二酸化炭素)がどうしても排出されますが、ダンボールがほとんどCO2を出さずにリサイクルできます。また、ダンボールは100%再生可能な天然素材なので、リサイクルされずに放置されたとしても最後は土に還るのです。
・ダンボールは保温効果・保冷効果がある
ダンボールのあの3層構造は中が中空になっているので、温度が移りにくいのが特徴です。温かいものは温かいままに。冷たいものは冷たいままに運ぶことができます。
○まとめ
ダンボールの素材、会社によってなんとなく違うんだろうな~と思っていたら、しっかりとした基準をもとに作られていることが分かりました。
これからはダンボールが家に届いたら、その断面をじ~っと見て、「これは……Aフルートだ!」なんて当ててみるのもおもしろいかもしれません。ダンボールに詳しくなれば、通販をする場合も「来てみたらぺらぺらだった~~」なんてこともなくなりそうです!